第4話
春の嵐の中で目が覚めた。
春分の日っていつも天気が荒れている気もするし、ただの思い込みな気もする。人の記憶は曖昧だ。
現にこの日記を執筆している今、朝に何を食べたか思い出せないでいる。少し焦る。
腹が満たされた後、僕の脳みそはいつものようにオーバーヒートしだす。あらゆるものに興味を示し、とにかく周りの状況を全て取り込もうとする。
これは子どもの頃からそう、僕は"くもりぞら"って表現していたな。頭がモヤモヤして、たくさんの事象を処理できずにイライラするしどうすれば良いのかわからなかった。
そのせいで小学生の頃、いろいろ奇想天外摩訶不思議な事件を起こしたりもするのだが、これはまたいつか書こうと思う。
話を戻そう。
大人になった今、対処法を確立した。
寝ればいいのである。
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気がつくと、子どもとお風呂に入っていた。
顔が異常に自分とそっくりだ。不思議と名前がわかっていた。
本(ブック)くん。キラキラネームだ。
しかし、僕がつけそうな名前でもある。知識の塊、辞書みたいな男になれ、とか言いそうだ。
親も奥さんも止めてくれよまったく。
この子は体を洗うときゃっきゃと笑顔が溢れ、癒される。とにかく可愛い。自分みたいだからかな?
奥さんは見当たらないが、子どもの顔がやたら自分に似ているから似た顔の人と結婚したんだろう。
そして、風呂桶が木造。えらく貧乏なのか、金持ちなのかわからん。
ひとしきりお腹の段々をコチョコチョやってはきゃっきゃとはしゃぐそんな時間を過ごした後、この子はまだ言葉を発していないことに気づく。
話しかけてみた、『最近どう?』
どうみても1歳半くらいな彼にする質問ではないのだが、不平不満があるなら聞いてやりたかった。
同じ男として。
ブック君は口を開くなり、
『食傷気味だよねー。』
と。えらい大人びてるな、と笑う僕。
うんうん、不満だよね、幼児期の退屈な毎日。
食事とかに対して色々な要求もあるだろうなーと思い、私はこう返す。
『具体的に何?ご飯とか?』
ブック君は少しイラつきながら、衝撃の返答をしたのである。
『いや、資本主義の話ね。』
コイツはめんどくさい!バーのカウンターにいるオジさんみたいなやつだな、と思いながら止まらないブック君の突然始まった坪内逍遥評を聞いている途中で目が覚めた。
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夢でよかった。子育ては慎重にやろうと心に決めました。
あと、今日の朝はベーコンエッグとご飯でした。
思い出せてよかった。
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